第4章 紫音の両親
午後5時になり、あたし達はクリスマスパーティーを始めた。
テーブルに並ぶ料理を見て、花音さんは目を輝かせた。
「わぁ、美味しそうねー!」
三人で乾杯をすると、花音さんがチラチラとあたしを見た。
プレゼントを渡したいのだろうと察したあたしは、横目で紫音を見た。
紫音も察したのか、小さく頷いた。
「俺にはサンタさん来るのかなぁ。」
紫音が小さく溜め息をついた。
自然だが、演技をしているのが分かり笑いそうになってしまった。
花音さんが今だ、と言わんばかりに背中の後ろに隠していた小さな袋を二つ出した。
「紫音、これ私からのクリスマスプレゼントよ。」
花音さんが青い袋を紫音に渡した。
「え、ありがとう妖精さん!」
紫音は何も知らないフリをして嬉しそうに袋を受け取った。
「はい、七瀬ちゃんにも!」
「ありがとう、妖精さん。」
あたしが貰ったのはピンクの袋だった。
「開けていい?」
紫音がそう聞くと、花音さんは大きく頷いた。
あたしと紫音は丁寧に袋を開けた。
袋の中にはビーズで作られたブレスレットが入っていた。
紫音は青、あたしはピンク。
御守りの時もそうだったが、花音さんの中で紫音に何かを渡す時は青、あたしに渡す時はピンクというこだわりがあるようだ。
「お揃いなのよ。二人は恋人同士だから。」
そう言われてよく見ると、色違いの同じビーズが使われていた。
嬉しくて、でも少し照れ臭くて。
紫音に視線を送ると、紫音も少し照れ臭そうに笑った。
「ねぇ、つけてみて?」
花音さんにそう言われ、あたし達はブレスレットを腕に通した。
キラキラと光るブレスレット。
とても綺麗だ。
「綺麗だね。本当にありがとう、妖精さん。」
あたしがそう言うと、花音さんの表情が変わった。
いつもの無邪気で少し幼い表情から、急に大人っぽい笑みを浮かべた。
「二人には幸せになってほしいの。心からそう思ってる。」
声のトーンも、口調も、いつもより大人びてるように感じた。
何かが違うと思って紫音を見ると、紫音は驚いた顔をしていた。
「花音…?」
紫音が花音さんの前で彼女の名前を口にすることは絶対に無い。
まさか…戻った?
しかし花音さんはすぐにいつもの表情に戻った。