第4章 紫音の両親
ツリーの飾り付けが終わると、花音さんがリビングから出ようとしたので声をかけた。
「妖精さん。どこに行くの?」
「自分の部屋よ。ちょっとやらなきゃいけないことがあるの。」
「やらなきゃいけないこと?」
「ふふ、秘密よ。」
花音さんは得意気な笑みを浮かべて三階の自分の部屋に行った。
一人になったあたしは、夕飯の支度を始めた。
今日はあたしがクリームシチューとサラダを作り、紫音がチキンを買って来る。
夕飯を作っていると、三階から花音さんの叫び声が聞こえた。
パニックになったのかと思った私は、薬の袋と水を持って慌てて花音さんの部屋に向かった。
「妖精さん!?どうした…。」
部屋のドアを開けると、唖然としてしまった。
花音さんの部屋の床には、丸いビーズが沢山散らばっていた。
「七瀬ちゃん、ごめんなさい。大きな声出して…。」
「いや、大丈夫だけど…このビーズどうしたの?」
「…紫音と七瀬ちゃんにクリスマスプレゼントにアクセサリーを作ってたんだけど…ビーズの箱、落としちゃって。」
状況を理解したあたしは袋と水を花音さんから見えない位置に置き、泣きそうな顔をしている花音さんの頭を撫でた。
「ありがとう。紫音には渡すまで内緒にしておくから、とりあえずビーズ拾おっか。」
「うん…本当は七瀬ちゃんにも内緒にしていたかったのに…。」
「そっか…でも嬉しいよ。楽しみにしてるね。」
そう言って微笑むと、花音さんは嬉しそうに笑った。
二人でビーズを拾い、箱にしまった。
「七瀬ちゃん、ありがとう。」
「どういたしまして。あたし、下でご飯作ってるから何かあったら呼んでね。」
「うん、わかった。」
花音さんは再び作業を始め、あたしはキッチンに戻った。
あたしは今まで花音さんを迷惑だとか、嫌だとか思った事は一度も無い。
花音さんは姉であり妹の様な存在で、一人っ子のあたしにとって姉妹ができた気分で嬉しかった。