第3章 忘れられない1日
リビングに入ると、花音さんが泣き叫んでいた。
紫音は花音さんを抱きしめながらあたしに言った。
「七瀬、テレビ消して!!」
「う、うん…。」
訳が分からず、ただ紫音の物凄い剣幕に圧倒されて言われた通りにテレビを消した。
「妖精さん、落ち着いて。大丈夫だよ。」
「いやぁ、いやぁー!!」
紫音の腕の中で暴れる花音さん。
「悪い奴らはもういないから。大丈夫だから。」
「私は妖精!!この家の妖精なの!!」
「うん、そうだよ。だから誰も妖精さんを傷つけることはできないから。だから大丈夫。」
紫音があたしを見た。
「七瀬、キッチンの真ん中の引き出しにある袋と水持ってきてくれる?」
「え?うん、わかった!」
あたしはキッチンに行き、真ん中の引き出しを開けた。
何種類かの錠剤が入った袋があり、コップに水を入れて袋と一緒に持ってリビングに戻った。
「紫音、持ってきたよ。」
「ありがとう。」
紫音は薬の袋を開けて数種類ある内の一錠を手に出して花音さんに言った。
「妖精さん、悲しいことがなくなるお菓子だよ。ほら、飲んで。」
それは、誰から見ても薬なのに。
花音さんは泣きながら口を開け、紫音は薬を彼女の口に入れて水の入ったコップを渡した。
花音さんは薬を飲むと、紫音にしがみ付いた。