第3章 忘れられない1日
「七瀬は?そういうのあるの?」
「あたしはー…とりあえず二人はほしいかな。自分が一人っ子で少し寂しかったから。」
「なるほどね。」
「あとは家族みんな仲良しな家庭にしたいかな。」
「じゃあそういう家庭を築きたいね。」
築きたいね、という言い方が嬉しかった。
深い意味は無いのかもしれないが、あたしと築いてくれる気持ちがあるのかな…なんて思った。
食事が終わり、会計を済ませて店を出た。
腕時計で時間を確認すると、午後4時になるところだった。
「この後どうしようか?」
そう紫音に言った時、紫音のスマートフォンが鳴った。
画面を見た紫音の顔付きが一瞬で険しくなった。
着信らしく、紫音はすぐに電話に出た。
「妖精さん!?どうしたの!?」
電話の相手は花音さんの様だ。
「わかった、すぐに帰るから。絶対に家から出ないで。」
紫音の様子からただ事ではないと察した。
「ごめん七瀬、帰らないと…。」
「どうしたの?花音さんに何かあったの?」
「ごめん、事情は今度話すから。」
紫音はすぐにタクシーを掴まえた。
「あたしも行く!!」
そう言うと、一瞬紫音の瞳が揺らいだ。
「わかった、乗って。」
紫音はあたしの腕を引っ張り、タクシーに乗せた。
数分で紫音の家の前に着き、紫音はタクシーの運転手にお金を渡すとお釣りも貰わずに家の中に入った。
あたしも急いで後を追った。