第3章 忘れられない1日
蕎麦を食べる紫音を、先程の男の子がチラチラと見ていた。
「ママ、外人もお蕎麦食べるんだね!」
「だからやめなさい!もう本当にすみません…。」
あたしは再び吹き出し、紫音は笑いながら男の子に言った。
「お味噌汁も飲むしお寿司も食べるよ。」
「そうなんだぁ…!」
子どもからしたら、外国人が日本食を食べるイメージが無いのだろう。
男の子は目を輝かせ、紫音に興味津々だ。
「まったくもう…すみません。ほら、食べ終わったから帰るよ。」
母親が申し訳なさそうに紫音に頭を下げ、男の子を連れて会計に向かった。
男の子が店を出る際に振り返って紫音に手を振り、紫音も笑顔で振り返した。
「紫音って子ども好きなの?」
「うん、好きだよ。」
「へぇ、ちょっと意外。」
「そう?」
「もし、さ。誰かと結婚したら子どもは何人くらいほしいとかあるの?」
図々しい気がして、あたしと、とは言えなかった。
紫音は少し考える仕草をした。
「うーん…3人以上はほしいかなぁ。」
「3人以上っ?」
自分が一人っ子ということもあり、3人以上と聞くと大家族の様に感じた。
「できたら最初は男の子がいいな。下の子を守れるくらいの逞しい子に育ってくれるのが理想だね。」
「そこまで考えてるんだ…。」
驚きつつも感心していると、今度は逆に聞かれた。