第3章 忘れられない1日
お昼時を過ぎたレストランは空いていて、すぐに席に案内された。
紫音がメニューを開いてあたしの方に向けてくれた。
「あ、お蕎麦ある。あたし山菜蕎麦にする。」
「俺も同じのにしようかな。」
すぐに決まり、店員に注文をして料理を待っていると、隣のテーブルに座る幼い男の子が紫音をじっと見つめていた。
それに気付いた紫音は、男の子に向かって微笑んだ。
すると、男の子が紫音を指差した。
「外人!ねぇママ外人がいるよ!」
「やめなさい!すみません…。」
母親に注意され、男の子は紫音から目をそらした。
あたしは思わず吹き出してしまった。
紫音は大丈夫ですよと言いながらも苦笑いをした。
「小さい子から見たら外国人だよね。」
「まぁ、そうだね。」
「紫音は何処の国とのハーフなの?」
「母親がイギリス人で父親が日本人だよ。でもハーフでこんなに外国の血が色濃く出るのは稀みたいだね。」
「そうなんだ。じゃあ前はイギリスに住んでたの?」
「うん、そうだよ。」
「へぇー…海外って家族旅行でハワイにしか行ったことないや。」
改めて見ると、本当に綺麗な瞳をしている。
もしもあたしと紫音の間に子どもが生まれたらクォーターになる訳か。
「…って、気が早いわ!」
自分で自分に突っ込みを入れてしまった。
紫音が不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの?」
「いや、何でもない!」
そこでタイミング良く料理が運ばれてきた。