第3章 忘れられない1日
「守るよ。あたしは何があっても二人の味方だし、何かあれば守る。」
「…七瀬らしいね。俺も、七瀬と花音を守るよ。」
その時、父の躾の事が頭に浮かび、あたしは紫音の手を握った。
今なら、言える気がする。
「七瀬?どうしたの?」
紫音が心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。
しかしふと我に返った。
今この流れで話したら、父から守ってほしいと言うのと同じだ。
それは、不可能だから。
「いや、何でもないよ。」
あたしは笑って誤魔化した。
「七瀬。」
「なに?」
「俺は、何があっても七瀬の傍にいるからね。」
その言葉は素直に嬉しかった。
でも、大丈夫。
大学を卒業すれば、あたしは自由になれるから。
後から、実はこんな家庭だったんだって笑いながら話せばいい。
「紫音、ありがとう。」
あと、約3年と半年。
それまで待っていてほしい。