第3章 忘れられない1日
「それだ!でも何で?」
「…花音を犯した奴らの一人を殺しかけた話はしたよね?」
「うん…。」
「それから目付きが変わったって親には言われた。でも最近は自然に笑えてるんだとしたら…それは七瀬のお陰かな。」
「あたし?」
「うん。七瀬と付き合ってから少し考え方が変わったんだ。」
「そうなの…?」
紫音は庭で草花に水をあげている花音さんを見つめた。
「今でも花音を犯した奴らが憎いよ。だけど今は、あの時殺さなくて良かったと思ってる。あの時殺してたら…花音や両親は人殺しの家族として世間から冷たい目を向けられただろうね。それに俺は前はそういう連中を世の中のゴミだと思って平気で刺したりしたけど…もしもそれで俺が捕まったりしたら七瀬を悲しませるし、こうして一緒にいることもできなくなる。そう思うとね、今はそんな事できないよ。」
紫音は視線をあたしに戻して微笑んだ。
「…そうだよ。そんな奴ら、傷付ける価値もないんだよ。そんな奴らを傷付けて紫音の人生台無しにするなんて勿体ないよ。花音さんを犯した奴らはあたしも許せない…でも過去をいつまでも憎むより、これからどうやって花音さんを守って行くか考えよう?あたしも守るから。花音さんのことも、紫音のことも。」
「俺のことも守ってくれるの?」
紫音はクスクスと笑ったが、あたしは本気だった。