第1章 二人の事情
シュリから話を聞いた帰り道、心の中は不安や心配な気持ちでいっぱいだった。
まだ白血病だと決まった訳ではないのに、縁起でもないことばかりが頭に浮かぶ。
一人で夜道を歩いていると、いきなり知らない男二人に声をかけられた。
「お姉さん、一人で夜道歩くなんて危ないよー?」
男二人に挟まれて、しまった…と思った。
普段ならこの手の男が近付いて来ると先に気付いて避けたり足を速めたりするのだが、シュリの事で頭がいっぱいで気付かなかった。
男の一人に手で口を塞がれ、狭い路地に引きずりこまれた。
この辺りは住宅街。
夜は人通りが少なく、口を塞がれてしまうと他に助けを求める術が無かった。
必死に抵抗するが男二人に敵うはずもなく、このまま犯されると思ったその時…。
あたしの目の前にいた男がいきなり悲鳴を上げた。
訳が分からずにいると、右肩を押さえながら男はその場にうずくまった。
そして、小さなナイフを持ってニッコリと笑う紫音が視界に入った。
ナイフには血が付いていて、紫音が男を後ろから刺したのだと察した。