第10章 運命の日
花音さんから電話が来てから数日間、紫音はずっと何かを考えていた。
声もかけづらいくらい、真剣に。
今のあたしには紫音しかいない。
その紫音が何を考えているか分からないのは、あたしにとって不安なことだ。
紫音を信じていないわけではない。
だけど、父が雇ったであろう探偵がついに紫音の家族に接触した。
紫音は家族を…特に花音さんのことを大切に思っている。
家族のことを思い、紫音の気持ちが変わる可能性もある。
この生活に終止符を打つ。
そう言われるのではないかと、少し不安になった。
だけどそう言われたら私はそれを受け入れるつもりだ。
「紫音。」
「どうしたの?」
声をかけると、紫音は考え事をやめて顔を上げて微笑んだ。
「最近、ずっと考え事してるみたいだけどさ…。」
続く言葉を言うのを一瞬躊躇ったが、勇気を出して話を続けた。
「探偵が紫音の家族にも接触したし…紫音は家族のこと大切に思ってるじゃん?だから…この生活、終わりにしてもいいからね。」
その瞬間、紫音が怒った。