第10章 運命の日
いつの間にか桜が散り始め、時の流れを感じた。
この生活はいつまで続くのか、紫音は何も言わないがお金は大丈夫なのだろうか。
もしかしたら父はもう諦めたのではないか…。
常に一緒にいるが、不安な気持ちなのは紫音も同じだと思うと話せなかった。
ある日、紫音のお母さんから電話がかかってきた。
電話に出た紫音は目を見開いた。
「花音…?」
電話の相手はお母さんではなく花音さんのようだ。
花音さんは入院しているはずだ。
何故、その花音さんから電話がかかってきたのだろう…。
花音さんに言われたのか、紫音はスピーカー機能のボタンを押し、花音さんの声があたしにも聞こえるようにした。
「紫音、七瀬ちゃん、久しぶりね。」
花音さんの声は少し強張っていた。
「お久しぶりです。」
花音さんに聞こえるように少し声を張ってスマートフォンに向かってそう言った。
「私ね、2週間前に退院したの。これからは通院でカウンセリングを受けることになったのよ。」
「そうなんですか?良かったですね!」
カウンセリングが続くとはいえ、退院できたことは喜ばしいことだ。
紫音を見ると、あたしと同じ気持ちなのか嬉しそうに頷いた。
「それでね、ここからが本題なんだけど…昨日お散歩をしてたら知らない男に声をかけられたの。」
花音さんの声のトーンが低くなり、嫌な予感がした。