第9章 決意と覚悟
「あの親だよ?どんな手段を使って探しだすかわからないよ?」
紫音は分かっているだろうが、確認せずにはいられなかった。
「わかってるよ。」
冷静な紫音に対し、あたしは動揺を隠しきれなかった。
「逃げるって…どこに逃げるの?」
「国内を転々としようと思ってる。」
「お金はどうするの?紫音、せっかく就職したのに仕事辞めるの?」
「お金の心配はしなくていいよ。仕事はもちろん辞める。」
「なんでそこまでして…っ。」
言いかけた言葉を飲み込んだ。
"何でそこまでしてあたしと一緒にいてくれるの?"
そんな事、聞いてはいけない。
一緒にいたいと言ったのはあたしだ。
それでも、紫音の将来まで棒に振る様な事をさせていいのかと考えてしまった。
「俺が七瀬と離れたくないんだよ。」
あたしの気持ちを汲み取ってくれたのか、紫音は優しく笑った。
思えばいつも彼の優しさに救われ、守られてきた。
そして今もそうだ。
あたしはこの1ヶ月、今後の事を全て紫音に委ねて自分は彼が出した答えを受け入れれば良いと思って過ごしてきた。
紫音がここまで考えて出してくれた答えだ。
この答えが正しいのか間違っているのか今は分からない。
だけどあたしは紫音と一緒にいたい。
あたしは紫音と生きて行く。
「ありがとう、紫音。」
「何があっても俺が七瀬を守るから。幸せにするからね。」
二人の決意と覚悟が重なった時だった。