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薔薇と向日葵~side story~

第9章 決意と覚悟


「久しぶり。」

玄関のドアを開けて微笑む紫音は1ヶ月前と何も変わっていなかった。
紫音の顔を見たら急に安心して泣きそうになった。

だけど泣いてはいけない。
紫音が話をしづらくなってしまう。

そう思って涙をこらえたのに、紫音が優しく抱き締めてきたから涙が溢れてしまった。

「1ヶ月以上も一人にしてごめんね。」

この声も、匂いも、温もりも、失いたくない。

これから紫音が何を話すか分からないが、強く強くそう願った。

久しぶりの紫音の家。
1ヶ月以上経ってもここはあたしにとってどんな場所よりも居心地が良い。

リビングのソファーに並んで座り、紫音から話を切り出すのを待った。

「七瀬は、俺と一緒にいたい気持ちは変わってない?」

そんな当たり前のことを聞かれると思わず、拍子抜けしてしまった。

「あ、当たり前じゃん!」

「良かった。俺も七瀬と一緒にいたいよ。」

クスクスと笑う紫音。
大切な話をするというのに、やけに穏やかなムードだ。
緊張や不安で押し潰されそうになっていた自分が馬鹿みたいに思えるほど…。

「七瀬。俺が出した答えに納得できなかったら正直に言ってね。」

しかしそれも束の間、紫音が真剣な口調になり、一気に緊張が走った。

「う、うん。わかった。」

紫音は私の手を握ると、今まで見てきた中で一番真剣な瞳で私を見つめた。

「俺と一緒に逃げてほしい。」

時が止まった感覚とは正にこの事で。

紫音が何を言いたいのか理解するまでに数秒かかって。

でも、それ以上の言葉を聞く前に理解ができた。

「…本気で言ってるの?」

そう問うと、紫音は無言で頷いた。
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