第9章 決意と覚悟
七瀬の両親に挨拶に行った日、七瀬が泣きながら言った言葉。
「七瀬が言ったんだ。俺と一緒にいたいって…っ。」
"一緒にいる"
俺達にはたったそれだけの事すら許されない。
ただ、七瀬はそれ以上何かを望まなかった。
たった一言、それだけを願うように口にした。
あの時の七瀬の姿が頭から離れない。
「紫音、七瀬ちゃんもそれを望むなら、私はそれでいいと思うわ。ただやるからには途中で投げ出しては駄目よ。何があっても七瀬ちゃんを守って、幸せにしてあげなさい。」
花音の凛とした声、そして言葉が、俺に覚悟を決めさせてくれた。
うつ向いていた顔を上げると、花音は柔らかな笑みを浮かべていた。
「私はいつだって二人の味方よ。どんなに離れていても、二人の幸せを願っているわ。」
花音の言葉に両親も頷いた。
「私達に迷惑がかかるなんて、そんなことは気にしなくていいのよ。家族なんだから。」
母さんが優しく俺の肩を抱き寄せた。
父さんは深い溜め息をついたが、その顔は見守る様な優しい笑みに変わった。
「助けが必要な時は連絡しなさい。七瀬ちゃんのご両親に何を聞かれても、絶対に何も答えないから大丈夫だ。」
この時、俺の中で答えは出た。
後は七瀬にこの話をして、彼女の返事を聞くだけだ。