第9章 決意と覚悟
「七瀬を連れて、逃げようと思う。」
そう言った瞬間、両親は驚いて目を見開いたが、花音は全く動じずに真っ直ぐ俺を見つめていた。
「勿論、七瀬の両親が探すのはわかってる。どこまで追いかけてくるかはわからないけど…。こんな形で使うことになるとは思わなかったけど学生の頃から貯めてきたお金があるからしばらくはそれで国内を転々とする。ただ、七瀬の両親は人脈が広いみたいだからどんな手段で探しだすかわからないし、まずうちに来るのは間違いないと思うから…父さんや母さん、花音にも迷惑をかけるかもしれない。」
俺は一呼吸置いて話を続けた。
「それに七瀬にはこの話はまだしてないから…この方法をとったら事実上七瀬は家族と縁を切ることになるし、これで本当に七瀬を幸せにできるのかって考えると迷っちゃって…。」
この1ヶ月、誰にも相談せずに一人で抱えてきた問題。
家族に話しても解決する訳ではないが、少しだけ心が軽くなった。
「紫音、そうすればお前だって仕事を辞めることになるし、追われる身になる。そこまでして七瀬ちゃんと一緒にいたいのか?こんな言い方はしたくないが…人生にはどうしようもできないことだってあるんだ。」
父さんの言葉には、七瀬のことを諦めろという意味が含まれている様に感じた。
だけど俺には、どうしても諦められない訳があった。