第9章 決意と覚悟
もう1ヶ月以上七瀬を待たせてしまっている。
自分がこんなに優柔不断な男だと思わなかった。
きっと七瀬は不安な気持ちを抱いたまま毎日を過ごしている。
そろそろ答えを出さないといけない。
全く何も考えが浮かんでいない訳ではない。
一つの考えが浮かんでいるが、覚悟を決められない自分がいる。
今日は仕事が休みで、両親と三人で花音の面会に来た。
花音は最近は精神的に落ち着いてきている。
花音の病室に行くと、彼女は嬉しそうな笑顔で迎えてくれた。
「紫音、七瀬ちゃんとは最近どうなの?」
花音は面会の度に七瀬の事を聞いてくる。
花音にとって七瀬は、家族同然の存在なのだろう。
「そういえば最近会ってないみたいだけど、何かあったの?」
母さんの言葉で、最近は仮面の様になっていた笑顔が引きつってしまった。
「えっと…。」
言葉に詰まり、両親と花音が心配そうな顔をした。
「…何か、あったの?」
花音にも尋ねられ、気が緩んだ俺はその場で今の七瀬との状況を話した。
話終えると、部屋が静まり返った。
やはり話さなければ良かったと少し後悔していると、花音が口を開いた。
「諦めるの?紫音。」
花音にしては強い口調だった。
七瀬を幸せにするのではなかったのかと言われている気がした。
「…一つ、考えがある。でも本当にこれで七瀬を幸せにできるのかわからないし、もしかしたら父さんや母さん…花音にも迷惑をかけるかもしれない。」
本当にこれでいいのか自問自答している内に時間が経ってしまった。
「話してみて?」
花音が優しい口調でそう言った。
俺は意を決して、家族の前でその話をすることにした。