第7章 自由の理由
「お父さん、何言ってるの!?」
思わず立ち上がり、父に詰め寄った。
「どういうこと!?」
紫音も困惑して何も言えずにいる。
「七瀬、座りなさい。」
父の態度が一変し、威圧的な口調でそう言われ、あたしはソファーに座った。
「七瀬、お前は自分の立場をわかっていないようだな。」
「あたしの立場って何…?」
「お前は私の一人娘なんだぞ。そこら辺の…こんな地位も名誉も無い男に嫁がせる訳がないだろう。」
父は見下す様な目で紫音を見た。
「学生の間は好きにさせてやろうと思って黙っていただけだ。お前は卒業したら私の決めた相手と結婚させる。」
「何、それ…。」
両親は寛大になった訳でも、あたしと紫音の関係を認めてくれていた訳でもなかった。
ただ、最後に"自由な時間"を与えただけだったのだ。
しかもこんな風に紫音を侮辱するなんて…。
今まで抑えていた感情が爆発した。
「ふざけないでよ…あたしはお父さんの所有物じゃない!!あたしの人生はあたしのものなんだよ!!」
「父親に向かって何だその口の聞き方は!!」
父があたしを叩こうと手を振り下ろした瞬間、紫音があたしを庇って叩かれた。
「…いつも…。」
紫音が小さく呟いた。
父は眉間に皺を寄せて紫音を見た。
「何だ?何か文句があるなら言ってみろ。」
「いつも、こうやって七瀬に手を上げてたんですか?」
紫音が父を睨んだ。