第7章 自由の理由
紫音を連れてリビングに入ると、ソファーに座っている父に母が声をかけた。
「別所君、いらっしゃいましたよ。」
父は振り向いてソファーから立ち上がり、紫音の前に立った。
「君が別所君か。」
紫音が名乗るよりも先に父が口を開いた。
「初めまして。これ、お口に合うと嬉しいのですが。」
紫音は持参した手土産を父に渡した。
「ご丁寧にありがとう。」
父は笑顔で手土産を受け取り、母に渡した。
怖いくらい父の態度が良く、これから何か起こるのではないかと疑ってしまう自分がいた。
父に促されてソファーに座った。
母がお茶を出し終えて父の隣に座ると、父は早速本題に入った。
「七瀬から聞いたよ。二人は長くお付き合いしているみたいだね。」
「はい。」
紫音がハッキリとした口調で答えた。
「それで、七瀬と結婚するつもりでいるらしいが…申し訳ないが七瀬は大学を卒業したら別の方と結婚する事が決まっているんだ。」
父の言葉に耳を疑った。