第7章 自由の理由
「親の言うことを聞けない子どもに"躾"をして何が悪い?」
「これは躾じゃない…貴方は力付くで娘をコントロールする最低な父親ですよ。」
「何だとっ…。」
父が紫音の胸ぐらを掴んだが、紫音は全く動じなかった。
真っ直ぐと父を見据えるその瞳には怒りが宿っている。
「殴りたいなら殴って下さい。その代わり、七瀬には何もしないと約束して下さい。」
「何様のつもりだ…。少し野放しにしていたらこんな男と結婚するだなんて、調子に乗るな。」
父は紫音を突き飛ばした。
「せいぜい七瀬が卒業するまで好きにすればいい。」
父は吐き捨てる様にそう言って寝室に入って行った。
「紫音、ごめん…本当にごめん…。」
まさかこんな事になると思わず、あたしは謝る事しかできなかった。
「大丈夫だから、謝らないで。」
紫音はいつもの様に優しく微笑みながらあたしの頭を撫でた。
「…だから言ったでしょう。別れた方がいいって。」
ずっと黙って見ていた母が呆れた様にそう言った。
あたしの怒りの矛先は母に向いた。
「ねぇ、全部知ってたんだよね?何で教えてくれなかったの!?」
母は何も答えずにあたしから視線をそらした。
「お父さんもお母さんも最低だよ…紫音、行こう。」
あたしは紫音の腕を掴んでリビングから出た。
「お騒がせしてすみませんでした。」
去り際に紫音がそう言って頭を下げたが、母は見向きもしなかった。