第7章 自由の理由
それから両親に結婚の話をすることはなく、3月中旬、紫音は大学を卒業した。
紫音は社会人、あたしは4年生になり、今までよりも一緒に過ごす時間は減ったが、紫音は必ず休日はあたしのために時間を作ってくれた。
6月になり、紫音と話し合った結果、両親に紫音と会ってもらえるか頼むことにした。
両親と夕食を食べている時、あたしは意を決して父に話しかけた。
「お父さん。お願いがあるんだけど…。」
「どうした?」
「紫音…別所君に、会ってほしいの。」
父の表情が険しくなった。
「どうしてお父さんが会う必要があるんだ?」
「それは…えっと、あたしが大学を卒業したら、紫音と結婚しようと思ってるから。」
緊張から声が震えそうになったが、ハッキリとそう伝えた。
父は箸を置いてあたしを見つめた。
「わかった。今度の日曜日に連れてきなさい。」
意外にも簡単に了承してもらえて拍子抜けしてしまった。
食事を終えて自分の部屋に入った瞬間、一気に全身の力が抜けた。
あたしは紫音に電話をかけた。
「もしもし?」
「お疲れ様。今お父さんに話したら今度の日曜日に連れてきなさいって言われたんだけど…大丈夫?」
「大丈夫だよ。」
「意外とあっさり了承してくれたから拍子抜けしちゃったよ。お母さんがあんな事言うから正直かなり不安だったけど、大丈夫なんじゃないかな。」
「…そうだね。」
きっと、上手くいく。
そう信じて日曜日を迎えた。