第7章 自由の理由
結局その日は父に話をする事はできず、翌日あたしは紫音に母に言われた事を話した。
それを聞いた紫音は複雑そうな顔をした。
「付き合うのは良いけど結婚は駄目ってことなのかな。」
あたしの言葉に何も言わずに、紫音は何かを考えている。
しばらくお互いに口を開かなかった。
「…七瀬って、許嫁とかいるの?」
口を開いたかと思えばそんな事を聞かれ、驚いた。
「いや、いないよ。そんな話されたこともないし…だいたいそんな人いたら紫音と付き合ったりしないよ。」
「そうだよね。」
紫音は普段通りの穏やかな口調で言った。
「とりあえず、俺が就職してちゃんと準備が整ったらまた考えようか。いくら内定貰ったからって、学生の内は賛成してもらえないかもしれないし。」
「なんか、ごめん。めんどくさい親で。」
「そんな風に思わないよ。大丈夫。」
紫音は優しく頭を撫でてくれたが、あたしは内心不安な気持ちでいっぱいだった。