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薔薇と向日葵~side story~

第7章 自由の理由


花音さんは精神科で本格的にカウンセリングを受けるようになった。
妖精さんの時の記憶は曖昧で、覚えていることもあれば覚えていないこともある状態だと紫音から聞いた。

「ある意味妖精さんでいた時よりも精神的に不安定な状態だから、先生にも入院をすすめられてるんだ。」

あの日以来、紫音は元気がない。
あたしはかける言葉が見付からず、紫音の話を聞くことしかできなかった。

「…痣、なかなか消えないね。ごめんね。」

花音さんが投げたコップが当たった時にできた痣は、未だに少し残っている。
紫音はそれを気にしていた。

「気にしないで。こんなのその内消えるから。」

こんなものは、その内消える。
だけど花音さんの心の傷が消えることはあるのだろうか。

あの日以来、紫音の家には行っていない。
あたしは花音さんが心配で、顔を見たかった。

「ねぇ、今日紫音の家に行ってもいい?」

「え?うん、いいけど…。」

「花音さんに会いたいからさ。」

その日、あたしは約3週間ぶりに紫音の家に行った。

花音さんはリビングのソファーに座って窓の外を眺めていた。

「花音さん。」

声をかけると、ゆっくりとこちらを向いた。

「七瀬ちゃん…。」

気まずいのか、花音さんはうつ向いてしまった。

あたしは花音さんの隣に座り、彼女を抱きしめた。

「久しぶりだね。」

そう言うと、花音さんは静かに涙を流した。

「七瀬ちゃん、本当にごめんなさい…。」

「謝る必要なんてないよ。」

「私がおかしかった間、ずっと傍にいてくれたって聞いて…迷惑をかけてごめんなさい…。」

「迷惑だなんて思ってないよ。あたし、花音さんと一緒にいると楽しいし、幸せだったよ。花音さんの優しさに救われた時もあった。」

花音さんは指で涙を拭い、あたしを見つめた。

「紫音と七瀬ちゃんは結婚するのよね?」

「うん…そしたら花音さんも一緒に暮らそうね。」

そう言うと、花音さんは目を伏せて首を横に振った。
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