第7章 自由の理由
あたしは紫音と二人きりの時に、花音さんが話していた内容を伝えた。
「今までそんなこと言ったことなかったのに…精神科の先生に話してみるよ。ありがとう、七瀬。」
紫音は必死に平静を装っている様に見えた。
「紫音、大丈夫?」
「俺は大丈夫だよ。ただ…花音はそろそろ自分と向き合わなきゃいけないのかもしれないね。」
そう言った紫音の瞳はとても悲しげだった。
自分と…自分の過去と向き合うことで、花音さんの心が壊れてしまうかもしれない。
あたしも不安で心配だった。
「そうだ、七瀬。」
「なに?」
「就職先が決まったら、一度七瀬のご両親に挨拶に行きたいと思ってるんだけど…。」
すぐに了承することができなかった。
最近は両親も寛大になったし、あたしが頻繁に紫音の家に出入りしていることも勘付いていると思う。
何か言われる訳ではないが、実際に紫音を紹介したらどんな反応をするか分からない。
「ごめん。紫音が悪い訳じゃないけど、少し考えさせて。」
結婚するとなれば何れは紹介することになる。
しかし何故か、言い様のない不安に襲われた。