第7章 自由の理由
あたしは3年生、紫音は4年生になった。
紫音は就職活動を始めて忙しくなり、あたしは紫音の代わりに花音さんと過ごす日が更に多くなった。
夏休みに入ったある日、花音さんと二人で紫音の家のリビングで折り紙で遊んでいると花音さんが言った。
「あのね、七瀬ちゃん。」
「どうしたの?」
「私、何か変な気がするの。」
「え…?」
あたしは思わず折り紙を折る手を止めて花音さんを見つめた。
花音さんは折り紙を折りながら話を続けた。
「最近ボーッとすることが増えて…何か大切なことを忘れてる気がするの。でもそれが何かはわからないの。」
「そうなんだ…。」
「ねぇ、七瀬ちゃん。」
花音さんが私を見つめた。
「私って、おかしいのかしら?」
これは、あたしの独断で余計な事を言っていい話ではない。
「そんなことないよ。」
あたしは普段通りの口調でそう答えた。