第1章 鳴かずば
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再会から三日。江戸には大型の台風が接近しており、外の風は少しずつ凶暴性を増している。お天気おねえさんである結野アナは今日も今日とて当たると評判の「ブラック星占い」を放送していた。それを食い入るように見つめる銀時も、日常の光景である。
『今日の最悪な運勢は天秤座の貴方です。今日は何をしてもモヤモヤと悩みます』
「んだよ。天気も最悪、運勢も最悪たぁテンション下がんじゃねーか」
『特に甘党で三日前に幼なじみと再会した貴方、今日は一番大切なものを失いま〜す』
「ああ?」
『大切なものを失わない為にも、今日は台風の中を歩いて下さい。きっと勝利の女神が微笑みますよ』
奇天烈な運勢向上方法、としか言いようがない。最悪の運勢なのだから台風の中を歩くなど、返って自分の運勢を地獄に叩き落としているようにか思えなかった。その上「一番大切なもの」と言うのも大雑把な説明でよく分からない。果たして雨の中を歩く必要があるのだろうか。勝利の女神との組み合わせも、なんだか妙だ。銀時は億劫な気持ちでニュースに切り替わったテレビ画面を見つめる。
たかが占い、されど占い。「甘党で三日前に幼なじみと再会した貴方」とピンポイントで銀時に当てはまる不幸の予言も容易には無視できなかった。嫌な占い結果ほど当たるのは経験上よく知っている。風邪を引く可能性が大ではあるが、憧れの結野アナの助言でもあるし、どうせ依頼も入って来ていない。多少無理をしてでも外を出歩くべきかどうか、銀時は悩む。