第1章 鳴かずば
「なに二人して固まってるんだい。ほらパー子、挨拶しな」
「り、臨時でオカマやってるパー子でぇす」
気まずい空気を壊してくれたのは、様子を見に来た西郷だった。変な空気になっている二人を不思議に思いながらも、西郷は銀時に挨拶をするように言う。銀時はとりあえず引き攣った笑みを携えて源氏名で自己紹介をした。
「パー子、この娘が新入りの五葉よ。基本は裏方の仕事を任せているから滅多に会わないでしょうけど、仲良くしてやってちょうだい」
「は、はーぃ」
「パー子はよく手伝いに来てもらって慣れてるから、貴方はいつも通り裏方で働いて大丈夫よ」
西郷によってサクサクと五葉の紹介は行われた。銀時に構わず仕事をして良いと言われた五葉は軽く頷き、食器を乾かす作業に戻る。それを見れば西郷は「早く仕事に入れ」と急かすように銀時を表へ連れて行った。
正直、あまりに突然な出来事に銀時の頭は混乱している。決して再会する事はないだろうと思っていた矢先にこれだ。その日、銀時は手慣れてしまった仕事をしながら、頭の片隅には常に五葉の事を考えていた。