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鳴かずば(銀魂:銀時夢)

第1章 鳴かずば


 しかし女子は話しが別だ。思春期に突入しそうな年齢が多い吉田塾の女子達は既に色気付き、顔の良い男子をピンポイントに狙って話しかける。これが銀時とよくツルんでいる桂や高杉に群がるのだから鬱陶しくて仕方が無い。現在進行形で桂と高杉と会話をしている銀時がいても、彼女らは遠慮なく銀時を無視して二人から注目を受けたがる。それが何よりも銀時を苛立たせた。桂と高杉と比べられ、容姿が劣っている事実を突きつけられるのが胸くそ悪かった。そんな事もあり、女子とは必要最低限しか口を聞いていない。

 だが五葉だけは違った。彼女だけは誰とも分け隔てなく話しかける。冒頭のように一言多い時もあるし、ただ単にお喋り好きなだけなのかもしれないが、飽きもせず銀時に声をかける女子はいつの間にか彼女だけとなった。元気で明るく、正直で真っ直ぐ。眩い笑顔で話しかけられれば、老若男女問わず彼女につられて満面の笑みを携える。

 銀時も五葉に話しかけられる時だけは心の何処かで温かさを感じていたが、如何せん彼は捻くれていた。素直に嬉しい事を「嬉しい」と表現できず、逆にむすっとした態度で反発する。人と接する事には多少慣れたが、やはり対人関係の不器用さは未だに改善されていない。

 今も五葉から朝の挨拶をされたが、反応は薄かった。視線を合わせるだけ合わせたが、その後はただ部屋の壁に凭れかけて静かに座るだけだった。「拒絶」と捉えられても可笑しくないほど銀時は無愛想だったが、そんな事も気にせず彼女は話しかけ続ける。外面はいかにも五葉に興味がないと言った感じだったが、態度とは裏腹に銀時は彼女の言葉を一字一句逃さぬように耳を傾けていた。
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