第1章 鳴かずば
万事屋に戻った後、銀時は玄関先の廊下に五葉を下ろした。へたりと座り込んだ彼女は何処か遠い目をしていた。その様子を見て銀時はブーツを脱ぎ、彼女の前に立つ。そして、問いかけた。
「……何で、あんな馬鹿な事をした」
廊下に座りながら聞いた銀時の質問は、無言の返事しか返ってこなかった。何も言わず俯いたままの五葉に苛立ち、銀時は床を両手で叩く。
「言えよ! 喋れんのは分かってんだ。俺の名前を呼んだ時みたいに声だせよ!!」
突然の大声と銀時の剣幕に五葉は怯える。しかし、彼女に話す以外の選択は無いと悟ったのだろう。彼女はゆっくりと口をぱくぱく動かす。久しぶりの会話だからだろうか。ぎこちなく発せられる声は掠れていた。
「……お、にいちゃんに、あいたかった」