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鳴かずば(銀魂:銀時夢)

第1章 鳴かずば


 五葉が見つめている先は、台風の影響で暴走する濁流だった。水位も高く、普段の静かに流れる土手の川とはとても同じ川には見えない。危うい雰囲気をした五葉もまた、あと一歩ほど前に足を踏み出せばその川に飲み込まれる位置にいた。嫌な予感がする中、銀時は足を早める。いつの間にか握ってた傘は手放しており、早めた歩みも全速力の走りへと変わっていた。

 あと少しで五葉に辿り着ける。そんな時、その場を暴風が襲った。走る体制を崩しかけたが、銀時はなんとかそのまま先を進む。しかし、目の前の光景が銀時から血の気を引かせた。それは土手に溢れる水を眺めていた五葉が、何の抵抗もなく暴風に身を任せて倒れる姿だった。倒れ先は荒川と化した土手の川。銀時は雨で濡れているにも関わらず、己の全身から冷や汗が吹き出るのを感じた。頭も真っ白で何が起こっているのかは理解できていない。

 気づけば銀時は五葉の帯を掴んで引き戻していた。勢いよく引っ張った所為か、銀時は戻って来た彼女を受け止めた後、泥とかした地面に尻餅をつく。強くなるばかりの雨の中、銀時は荒い息づかいをしながら無事つかまえた五葉を掻き抱いた。その姿はまるで、腕の中にいる存在が本物かどうか確かめているようであり、抱きしめる腕が緩む事は決してなかった。

 抱きとめた五葉の表情にはありありと驚きが浮かんでいたが、銀時はそんな彼女に構わずに息を整える事に専念した。呼吸が落ち着けば、そのまま銀時は五葉を横抱きにして立ち上がる。彼女が逃げられぬよう、しっかりと抱えた状態で万事屋へと向かった。
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