第2章 遣らずの雨_3z沖田総悟
激しい稽古帰り。
健康的な高校男児にとってここから晩飯にありつくまでの時間は
ハッキリいって地獄だ。
いつものように俺は剣道部の連中と、
学校近くのコンビニの前でファミチキを貪っていた。
「おい、あれ成瀬さんじゃね」
「でた-!ひっさしぶりに見れた」
「誰でィ、その成瀬って」
「えっ総悟御前知らねえの?成瀬。うちの学校で一番美人の」
「他校でも有名らしいぞ」
「女に興味なんざねェもんで」
「ッか-、イケメンはゆうことが違ェや。うっぜ!」
こんな猿どもと一緒になんのは御免被る。
そう思いつつ横目でちらりと様子を伺った。
黄昏も迫る頃。
彼女だけが煌々と輝いているようにみえたのは、
街が暗闇に沈んでいるからなのか。
男の掌ですっぽり包み込めそうな小さな顔も、
スカートから伸びる形のいい足も
這い寄る夕闇を内側から拒絶するように
いじらしく際立っている。
肩までのボブヘアーをゆらゆら揺らして
学校一の美少女という肩書を十分に持て余し、
彼女は一人歩いていた。
バコンッ!
成瀬をみていると、
激しい衝撃が頭を揺らすようだ。
まるで学生カバンで後頭部を強打されたような…
「…いってェ、何すんでィ」
「なにが女に興味ねェだよ馬鹿」
「一番見惚れてたぞ御前」