第2章 遣らずの雨_3z沖田総悟
じめじめとした空気が体に纏わりつく、
ある夏の日のこと。
『あちィから、今日休み。』
道場の入口に、辛うじて読み取れる文字で
無造作に貼り紙が残されている。
ごくたまに、うちの顧問はこうして部活をオフにする。
「ンでよりによって今日なんでィ…」
俺が珍しくやる気を出したと思ったらコレだ。
あろうことか俺は、
こんな時に限ってしっかり着替えも済ませてしまっていた。
しゃあねェ、自主練でもすっか…
道場に荷物を置き、
第二体育倉庫へ竹刀を取りに行く。
道場にも、体育倉庫にも人っ子一人いない。
遠くから聞こえる
竹刀のぶつかる音も
どっかの誰かの怒号も、今日は聞こえない。
ただ静謐に満たされた空間で、
埃っぽい匂いが鼻をつく。
こんな環境での自主練も悪くない。
ひとしきり素振りを終え、
気付けくと時刻は18時をまわっていた。
サーッとゆう雨音が
道場もろとも俺を包み込んでいる。
夕立だ。
生憎、傘は持ってきていない。
「今日はとことんついてねェや…」
片づけがてら、体育倉庫で雨宿りでもしよう。
そう思って道場を後にした。