第1章 常連さん_沖田総悟
沖田さんの隣に座って、
どれくらい時間がたったのだろうか。
さっきより少し小降りになった雨音は、
今も店内に響いている。
「全然止まねェなァ...」
「そうですね…、お仕事、大丈夫ですか?」
「濡れて風邪でも引いたら仕事できやせん
不可抗力でィ」
「仕事してるのあんまり見ませんけど」
「…平和なんだよ町が」
ああ、ずっとこんな時間が続けばいいのに
なんて思うのは我儘だって知ってるけれど。
この雨に閉ざされた空間の中には
社会的な肩書も、町の喧騒も何もない。
ただその空間に、沖田さんと私がいる。
私が団子屋である必要も、
彼が警察である必要もないんだ。
いつも周りを取り囲んでいるものがないから、
いつもより世界が澄んでいて
いつも見ていたはずの彼は
私が思っていたよりもずっと、近くて
そこにいるのは町のお巡りさんではなく
私と同じ世界で、私と同じように生きてる、
ただの男の子だった。
こうして思うのも、全部この雨のせいなのかしら。