第4章 BOYS LIFE <双子2歳>
二人のどちらかを主として扱う、という作りにしなかった。
それぞれの得意分野や日によってメインの仕切りを変えた。
一週間、翔が仕切ることがあったかと思えば毎日交互の時もある。
このビックリ箱的な司会方式が嵌まった。
どちらかが取材や中継で出演しなかったり、スタジオ以外から進行することもあった。
しかも、どちらが多くしゃべるかなどユニークな企画にデータ放送を連動させるなど斬新なことをした結果、午後の時間帯の番組の勢力図が変わった。
この方式を考え、上層部に通したのは東山で、彼が社内での政治力を存分に働かせた結果だというのが専らの噂である。
確かに東山が一枚噛んでるのは事実だった。
実際には東山の同期のプロデューサーの錦織の企画だ。
ただ、錦織が考えていた企画に東山がこのキャスター案をはじめ幾つかの案を載せたのだった。
面白いことをやりたかったのも、視聴率が欲しかったのも事実だが、これなら万が一翔が双子のことで番組に出演出来ない事態になってもどうにか出来るとも考えた結果だった。
有能な社員をフリーにしてしまうのは会社の損失だ。
ならば働きやすい環境を作るのも上司の仕事である、というのが東山の持論だ。
そして、東山のあざといところは予め、番組スタート時にその意図をある程度オープンにした。
会社としては子育て世代に優しいアピールが出来、子どもや子育てに関する取材はしやすくなったと現場からも概ね好評で三方良しの状況が作り出せた。
番組開始から1年ちょっと。
視聴率も好調である。