第3章 a day in our life <双子2歳>
寝室のベッドに二人を下ろし自分の右に和也を、左に智を座らせ、布団をお腹までかける。
「じゃ、絵本ね?終わったらねんねだよ?」
「ん、ねんねぇしゅる」と和也。
「ね?」と既に寝そうな智。
「今日は智のからね?」
翔は智の選んだ「くだもの」というタイトルの本を開く。
「す・い・か。…さあどうぞ」
ストーリーらしいストーリーはなくみずみずしく繊細に描かれた果物の絵が続く絵本。
「り・ん・ご。…さあどうぞ」
読むたびに食べる真似をするふたり。
口をもごもごさせる姿が可愛らしい。
「…ごちそうさまでした」
そう言って翔は絵本を閉じる。
隣の智は既に夢の中。
凭れかかる身体をそっと横たえる。
「次は和のだね?」
若干とろんとした目で翔を見ながら頷く和也。
智の胸を左手でポンポンと撫でながら右手に和也の選んだ絵本を持つ。
「和は『せんろはつづく』にしたんだ」
「ん、でんちゃ」
「そうだね、和、プラレール好きだもんね?」
そう言って絵本に目を落とす。
現役アナウンサーでナレーションに定評のある翔が淀みなく穏やかな口調で絵本を読み進める。
「あっ山だ! どうしよう?
そうだ、トンネルを掘ろう」
身体に重みを感じて和也をみるとこちらも夢の中。
ゆっくりと寝かせてそのまましばらく二人の胸元を一定のリズムでトントンと撫でる。
「ふたりとも、おやすみ」
暫く寝顔をながめてから、翔は絵本を持ち、電気を豆球にして部屋を出た。