第3章 a day in our life <双子2歳>
「か~ず?」
翔が顔を覗きこむと目に涙を溜めた和也が翔の顔を見て聞こえるか聞こえないかの小声で呟くように言う。
「…めんなしゃい…」
「風邪引いちゃうからね?
裸で走り回っちゃダメだよ。
ほらもう泣かない!
ね?パジャマ、着ようね?」
「ん、めんなしゃい…ぱぱ…ぉめんなしゃい…」
一度、声に出したらホッとしたのか泣きながら何度も何度も繰り返す。
「いいよ?もうわかったもんね?ほら万歳して」
「んっ、じゃんばいー」
しゃくりあげながら両腕をあげ万歳して上を着せてもらう。
「はい、ズボンも穿くよ?左からね?」
和也の左足を軽く叩いて合図する。
「よし、出来上がり!ほら、潤から麦茶もらっておいで」
頭をぽんっと撫でると和也は元気に潤の元に向かった。
潤から麦茶をもらい智の横に座らされる和也。
「かじゅ?えんえん?」
訊ねる智に首を振る和也。
「かじゅ、いいこ、いいこ」
隣の和也に智が手を伸ばし、小さな手で弟の頭を撫でる。
こんな辺りはやはり兄、なんだと思う。
和也は少し恥ずかしそうに智に言う。
「さと、ありがと」
そしてにっこりと笑った。
その笑顔に智も笑う。
二人の様子を翔も潤も、風呂から上がってきた雅紀も見ている。
3人は顔を見合わせ、この幸せな光景を優しい気持ちと共に共有した。