第3章 a day in our life <双子2歳>
ついに智が折れた。
多分、普通の家庭ならこんなに時間を掛けないだろうなぁ。
翔は自分たちのやり取りを俯瞰しながらそんなことを思った。
妹夫婦があんな事故に逢わなければもっと違ったアプローチをしてるだろう。
共働きで毎日忙しくしていればある程度強引に押しきるのが普通だしそれを否定する気もない。
実際、子育て中の女性たちを取材してその大変さを垣間見ている。
彼女たちの大変さや頑張りを前に子どもたちととことん向き合うべきだなんて言えるはずもない。
男3人で子育てをするという、ともすれば歪な形での育児だからこそ…夫婦だけで育てるよりも大人の手があるからこそ出来ることだと思う。
翔たちからはどうやっても母親からの愛情を注ぐことは出来ない。
父親としても…と常にどこかで負い目のようなものを感じている。
二人の本当の父親は母親と共に帰らぬ旅に出てしまったから。
だからこそ掛けられるときにはとことん、手も時間も掛けたいと思っている。
それが自己満足に過ぎなくても…それしか出来ないから。
「智?ほら、そんな顔しないの。
アイスクリームと一緒にパックンしちゃお?」
「んー。しょーちゃ、だっこ」
「いいよ、抱っこしようね?」
智を膝の上に乗せ、アイスクリームで挟んだ薬を飲ませた。