第3章 a day in our life <双子2歳>
賑やかな食事が終わった櫻井家。
食事の片付けをする潤の背後で小さな闘いが始まっていた。
翔と智が対峙し、それを和也と雅紀が見ている。
翔の手には粉薬の入った袋。
目の前には薬を飲ますのに必要と思われるものがおおよそ揃っていた。
ゼリータイプのオブラート、はちみつ、砂糖、牛乳にジュース…。
翔の前にいる智は無言で拒否の姿勢をみせている。
翔たちは智や和也に対して基本的には一個人という意識を持つようにしてきた。
もちろん幼い子どもだから大事に護り育てるのは基本だ。
ただ、何事も【子どもだから】とか【大人だから】とか【親だから】という理由で押し切るのはどうかと考えている。
安全や健康に関することは最重要だから最終的に押しきることになっても理由はきちんと説明するようにしている。
「智?智くん?パパのお話、聞いて」
「や、おくしゅり、ない!」
顔に断固拒否と書いて首を振る。
「お薬飲まないと、元気になれないよ?」
「んーん、しゃと、げんき」
全くもって頑固な智。
真面目な翔も全く引かない。
「そう?でもパパにはお熱があるように見えるよ?
智くんのお目目がお熱がありますって言ってるよ?」
それを聞いて目をぎゅっと瞑った智。
その様子が可愛らしくて…、一瞬負けそうになる。