第1章 少しだけスキャンダル<双子0歳>
「以前は『人に迷惑をかけずに生きる』ことが大事だと思っていました。
しかし子どもたちには
『人に迷惑をかけるのは仕方ない。
その分、もらった優しさを周囲に返そう』
って伝えていきたいと思っています。
子どもたちが成人するまでのおよそ20年近い時間を多くの愛情をもって過ごしていけるようにと思っています。
会社にも多くの迷惑をかけることになります。
私の状況を理解し応援してくれるという会社の上司、先輩、同僚、後輩全ての人に感謝しています。
周囲のみなさまに助けていただきながら、その環境を当たり前と思うことなく常に周囲に感謝の気持ちを持っていきたいと思っております。
子どもたちが小さいうちは、特に多くの、そして様々な形でご迷惑をかけることになると思います。
そのなかでせめて『ワーク・ライフバランス』の一つの在り方をお見せできるようになれればいいと思っております。
今後も精進して参りますのでよろしくお願いいたします。」
そう言って再び頭を下げた櫻井。
その言葉にざわついていた会場はいまや水を打ったような静けさに包まれていた。
東山はこれが好機と考え行動に移す。
「それではこれで会見を終了とさせていただきます。
本日はありがとうございました。」
椅子から立ち上がり一礼し櫻井を促して退室した。
そのままアナウンス部へと向かう。
無言のまま、社屋を歩く。
部内のミーティングルームに入って初めて東山が口を開く。