第3章 a day in our life <双子2歳>
「増田さんは本当に洋服が好きなんだね?
そう言うことなら喜んで。
でも写真は外に出さないって約束してくれる?」
「出しません、俺の心に仕舞うので!」
どや顔で答える増田。
「それならいいよ。さて、そろそろ行かなくちゃ」
本番まであと少し。
手越からスマホを返してもらうと少し早めだがスタジオに向かう。
前室のロッカーにスマホや余計なものを仕舞い施錠してスタジオに入る。
翔の顔を見たフロアーディレクターの横山がやってくる。
「翔くんなんかあった?」
「ヨコってさ、鈍感そうに見えて鋭いよね?」
「なにそれ?翔くん、俺のことdisってるん?」
「ごめん。そうじゃないよ。
約束通り情報共有。
智と和也が熱だしたって。
潤くんが迎えに行って雅紀が診察済みで問題は無しだって」
発熱と聞いたとたんに「大丈夫なんか?」と大声を出そうとした横山に食いぎみで現状を説明した翔。
「だからいつも通り、よろしくね?
横山ディレクター?」
にっこりと視聴者向けの笑顔を浮かべる翔。
「あーもう!わかったわ!
ほならいつも通りな?
…無理すんなや」
小声で最後のボソッという横山に翔が素の顔で呟く。
「ありがとう…」
そして気合いを入れるかのようにいつもよりも若干大きな声でスタジオのスタッフに「よろしくお願いしまーす」と言いながら入っていき、定位置についた。