第3章 a day in our life <双子2歳>
「別に構わないよ?」
そういってスマホを差し出す翔。
「あぁ!マッスー、ズルい!
俺だって見たい!」
とスタイリストさんに叫ぶメイクさん。
「うるさいよ、手越。それより早く仕事しなよ」
「あの、手越さん?
別に終わったら見て構わないから」
「やったぁ!翔さんありがとう!俺、頑張る!」
手越はマッスーと呼ぶスタイリストにあっかんべーをすると真剣な顔で翔のメイクを進めていった。
マッスーことスタイリストの増田は手にしていたスマホを翔に返しながらしみじみと言う。
「やっぱ、櫻井さんのところの双子ちゃん、かわいいわぁ。
子役とかキッズモデルとかさせたらいいのに。
あの二人が着る服だったら物凄い勢いで売れると思うけど」
「ムリムリ、それにああいうの、ステージママが必要でしょ?
うち、一応父子家庭だからね?
そんな余裕どこにもないよ」
笑いながら言う翔。
「はい、翔さん完成!今日も麗しいです」
と手越が鏡越しに言う。
「麗しいって、誉めてもなんにも出ないよ。
あっこれ」
約束通り、スマホを手越に渡す。
「あざーす」軽いノリで返事して受け取った手越は次の瞬間、夢中になって短い動画の再生を繰り返す。
「翔さん、双子ちゃん、オフィシャルなモデルはダメならプライベートはどうですか?」
諦めきれない増田が言う。
「『プライベート』ってどういう意味?」
「俺、服も作るんですよ。
普段はメンズとレディースをちょこちょこなんですけど…。
いつかはそっちをメインにしたくて。
和くんと智くん見てたらなんか創作意欲か涌いて…。
で作った服を着てもらえないかと思ったんですよ!」
熱っぽく語る増田に翔の笑みが零れる。