第3章 a day in our life <双子2歳>
素早く聴診器を首にかけ、チェストピースを大きな手のひらで包み込みながら和也に聞く雅紀。
「和、かっこいいお兄さんだから、もしもし出来るよね?」
すこし迷いつつも、『かっこいいお兄さん』という言葉に惹かれる和也。
あと半年で3歳。
この時期、お兄さんというワードはかなり魅力的だ。
もう赤ちゃんじゃないイコールお兄さんな2歳児。
プライドは案外高い。
その辺を上手くくすぐる、雅紀。
さすがに毎日、ぐずる子どもたちを相手にしているだけのことはある。
「どうする?」
促すように声をかけると和也がちいさく頷く。
「ん、かず、おにーしゃんなの」
「えらいえらい。じゃ、もしもししようね?」
看護師にサポートしてもらって聴診をする。
素早く丁寧に…。
双子たち、喘息の傾向があるので慎重になる。
目で合図して背中からも…。
もう一度前を向いた和也のお腹を軽く揉む。
「うん、大丈夫だね?」
「ん、だいじょーぶなの」
「そうだね?さいご、あーんね?」
「あーん、ない」
と、ここに来て再度抵抗を見せる和也。
思い当たる節のある雅紀。
「おえって、しないから大きくあーんだけして」
舌圧子が苦手な和也。
というか、得意な方が珍しいと雅紀も思うので出来るだけ使わないようにしてる。
雅紀はペンライトを片手に持ち立ち上がって和也を見下ろす。
「和、そのままドナさんみて。
ドナさんのお口の真似してみて」
優しく笑いながら言う。
和也の視線の先には立ち上がった雅紀の首に掛かる聴診器にぶら下がるドナルドダック。
雅紀が付いてる紐を引っ張るとドナルドダックが口をガパッとあける。
釣られてあいた和也の大きな口。
顎に手をかけて軽く固定して喉をみる。