第1章 少しだけスキャンダル<双子0歳>
東山が声をかけ、座らせるまでそのお辞儀は続いた。
それほどに彼は自分の周囲が騒がしくなることを防ぎたいと強く思っていた。
東山がマイクを再び取り、鋭い眼差しを記者たちに向けた。
「今回の件は本来であれば一会社員の極々プライベートな出来事です。
このような形で報道されるような内容でもなく、現実としてほかにも同様なことは起きていると思っています。
弊社としましては櫻井の『子どもたちを守り育てたい』という気持ちや覚悟を聞き、会社として出来るだけサポートすることを約束しました。
今回、このような場を設けたのもその一環と位置づけております。
今後は出演番組を含め考慮することも決定しておりますのでお伝えいたします。
また今後、今回のように櫻井個人はもちろん、その周囲に影響の出るような報道がなされた場合は然るべき手段を講じることも同時にお伝えいたします。
弊社は上場企業としてまた報道という使命を担う会社として毅然とした態度で臨みたいと考えております。
みなさまには十分にご理解頂ければと存じます。
本日はお時間を頂きましてありがとうございました。」
東山は目の前にいる同業者と呼ぶのにはかなり下劣な人間に対して頭を下げながら苛立つ気持ちを抑える。
それは全てかわいがっている後輩のため。
そして会社の役職者としての役目と念じて耐えた。
「最初にお約束しました通り、なにかご質問があれば、先ほど申し上げた弊社のスタンスから外れない範囲でお応えします。」
そう言って目線を端から端に移動させる。