第3章 a day in our life <双子2歳>
11時前。
ある程度外来患者の診察が終わり、一息つこうとした時にその日雅紀がいた第三診察室の外線がなった。
交換の馴染みの職員から「松本様からです」と言われそのまま回線が繋がった。
受話器の向こうの潤の声を聞きながらやっぱりって思った雅紀。
慣れた手つきで話ながら智と念のため和也のカルテを呼び出し、その場で午前診の最後に受診申込みを捩じ込む。
これぐらいのとは正直、院内ではまかり通る。
職員向けの福利厚生の一貫である。
潤からの外線を受けたあと、いつ潤たちが来てもいいようにと、更にテンポアップして診察にあたる。
テンポはあげても決して雑にならない。
これが雅紀が若いのに優秀だと周囲に評価されてる要因の一つであるのを本人は知らない。
午前中の双子以外の患者の診察が終わった雅紀。
そろそろかなって時計をみる。
双子用に普段は出さないぬいぐるみを出し、診察台のタオルも代える。
部屋が双子の大好きな双子のリス仕様にかわる。
智と和也はディズニーが好きで特に双子のリスことチップとデールがお気に入り。
二人の年頃だと王道のアンパンには見向きもしない。
もちろん、保育園である程度見聞きしてるから知ってるみたいだけど、興味はない模様。
まぁ、これには大人3人にも原因がないとは言えない。
二人の父親である達也に3人が双子用のオモチャを買おうとしたとき(まだ、二人がお腹にいる頃の話だが)に達也が言った一言にいたく感銘を受け、それを踏襲した結果だった。
曰く、『顔が濡れたぐらいでへたれるようなヒーローなんかにうちの敷居を跨がすか!』
けだし、名言である。
3人ともその言い分に唖然としつつもなぜか納得してしまった。