第14章 虹のカケラ <双子5歳>
「だってさぁ、たりないじゃん」
和也がさも当たり前に言う。
「ほら、これがぼくで、こっちがかず。
これがパパでぇ、こっちが潤くんでぇ、こっちがまーくんなの」
智がローテーブルのてるてる坊主を指差す。
「ね?たりないでしょ?」
和也がもう一度繰り返した。
「だからテッシュとひもがいるの」
智が潤を見ながら言う。
何を作っているかがわかってしまったら…潤だって反対なんて出来る訳もない。
「うん、わかったよ。
今出してくるからちょっと待ってて?」
そう言って在庫をおいてある棚に向かう潤の背中に双子の『ありがとう』の声がぶつかる。
二人に使えるようにしたティッシュ箱を渡すとまたせっせとてるてる坊主を作り出した双子。
「きっと台風、お泊り保育の前に過ぎるね。
二人が一生懸命、てるてる坊主つくってるんだもんね。
教室にも大きなてるてる坊主いたしね?」
潤は二人を迎えに行った時に見た大きなそれを思い出した。
智も和也も手を止めて潤を見るととびきりの笑顔で『うん!』って頷いた。