第13章 バレンタインデーキス <双子5歳>
4歳児クラス、つまり年中組になると『○○ちゃんは〇〇くんとけっこんしたんだって』とか『○○くんは〇〇ちゃんにけっこんしてくださいっていったんだって!』なんて話が聞こえてくる。
好きっていう気持ちを表現するときの最上級が『けっこん』という言葉の子どもたち。
好きの究極が【結婚】というのが微笑ましい。
とはいえ…そうとばかりも言ってられないのもまた事実で…。
実際に秋に行われた保育参観に行ったときに誰が誰と手をつなぐかで軽い喧嘩になる光景を見た潤と雅紀は軽い衝撃を受けて参加できなかった翔に見た光景をこと細かに話したぐらいだ。
今のところ和也からも智からもそういった話は聞かなかったからうちの子たちには関係ないんだなぁ…なんて翔たち三人はのんびりと構えていた。
ところが…だ。
その日の朝、珍しく早く朝食を食べた双子たちは出勤の準備に勤しむ雅紀の姿をじっと見てた。
「え?なに?どうしたの和も智も。まーくんにご用事?」
背中に視線を感じていた雅紀が耐えられなくなって双子に声を掛ける。
それでも双子はなにか言いたそうなのに言えずにただじっと洗面台で支度をする雅紀を見ていた。