第13章 バレンタインデーキス <双子5歳>
保育園の冬の一大イベント、生活発表会も無事に終わって卒園式の練習開始までのぽっかり空いた時間。
空いてると思ってるのは保育士と保護者ばかり…。
少しずつ色んなことを知り始めた4歳児クラスではちょっとした駆け引きが始まってたりする。
「ねーねー、涼介、なんで今日、いい匂いするの?」
お昼寝時間、眠れずにゴロゴロしてる和が同じく隣でゴロゴロしてる涼介に声を掛ける。
「ん?だってもうすぐバレンタインデーだもん。
いい匂いしたらモテるんだよ!」
「ばれんたいん?」
同じくゴロゴロしながら寝かけてた智が聞き慣れない単語に食いつく。
「あのねぇチョコレートの日なの」
これまた寝れずにいた侑李が口を挟む。
「え?チョコ?」
双子がユニゾンで反応する。
「涼ちゃん、和くん、さとくん、侑李くん?
4人ともお口チャック。
今はお昼寝の時間ですよ?
眠れないなら寝なくていいからお目々とじてお口ちゃっくしててくださ〜い?
他のお友達が起きちゃうからね?」
眠れない子どもたちの近くで事務作業をしてたまゆ先生が小声で注意する。
カーテン越しに暖かな日差しの降り注ぐ午後のいつもの光景。
今日もある意味、平和です。