第10章 冬のニオイ <双子3歳>
風呂場の中で石鹸クレヨンを手にした智と和也は思う存分落書きをした。
「さとのおせなかにかくぅ」
「あっ、あっ、かじゅ!めぇ
くしゅぐったいのーー」
お互いの体に描いたり、絵が苦手な翔にネコの絵をリクエストしてみたり…。
「ぱぱ、ねこちゃん!」
「え?俺が描くの?」
「しょーちゃん、にゃんにゃん、
かきかきして」
「ええ?パパうまくないよ?」
そう言いながら描いたネコはネコにはとても見えないもので、三人で笑ったり…。
どこかに出かけなくても子どもたちはその場を楽しむ天才で、その空気に翔も多いに楽しんだ。
かなりの時間が経って、翔がリビングに向かって声を上げた。
「はーい!今行くよー」
声に気がついた潤が風呂場に急ぐ。
「おまたせ。どっちからくる?」
風呂の扉に向かって潤が声をかける。
「しゃと!しゃとが!」
「かずがさきなの〜」
二人の声が風呂場に響く。
うしろから雅紀も顔を出して声をかけた。
「じゅんくーーーん」
「まーーーくーーん」
風呂場の扉が開くと同時に双子がタオルを広げて待ってる潤と雅紀に飛びついた。
「二人とも気持ちよかった?」
「「うん!!」」
「翔兄にありがとうした?」
「「あっ!ぱぱぁ!ありがと!」」
大きな声で叫ぶ二人にどういたしましてと答えた翔が潤たちに入るか聞く。
二人は入らないと答えた。
「じゃ、俺、ここ綺麗にしてから行くわ」