第10章 冬のニオイ <双子3歳>
転んだ痛みというよりは驚きで泣く双子を抱き上げた翔と雅紀はそのまま二人を風呂場に連れて行く。
「翔兄、二人を入れてもらってもいい?」
仕事の都合でなかなか子どもたちとお風呂に入れない翔。
だからこそ、いる時には一緒にお風呂を楽しんでもらいたいと考える雅紀と潤。
そんな二人の気持ちを慮って翔は素直に頷いた。
「よし、二人ともお風呂ちゃっぷんするよ?」
ひくひくとしゃくり上げていた双子は翔の顔を見た。
「ちゃっぷんしゅる?」
「ぱぱ、いっちょ?」
「うん、一緒だよ。
だから脱ぎ脱ぎしようね?」
二人のスキーウェアを翔と雅紀が手早く脱がしていく。
「あっ、そうだ、雅紀、あれある?」
「あれ?あるよ、ちょっと待ってて」
二人のスキーウェアを手にリビングの方に戻った雅紀が別のものを手に風呂場に戻ってきた。
「はい、これでしょ?」
雅紀が手にしたものを翔に渡す。
ありがとうと雅紀に言って受け取ると、それを見せながら双子を風呂場に促した。
「智、和、お風呂でお絵かきしよう?
新しいクレヨン用意したから
好きなだけ描いていいよ」
翔は手にした石鹸クレヨンを二人にみせる。
「いいの?かきかき?」
「いっぱいできる?』
二人が目を輝かせて聞く。
「いいよ、たくさん描こうね。
よし、入るぞ!」
楽しそうな三人の姿を雅紀は見送り、そのまま着替えを用意してからリビングに戻った。