第10章 冬のニオイ <双子3歳>
石鹸クレヨンであちこち落書きされた壁をスポンジとシャワーで綺麗にした翔が風呂から出た頃には遊び疲れた双子はすっかり夢の中だった。
「あれ?寝ちゃったの?」
翔が部屋着に着替えてリビングに戻るとリビング横の和室で智と和也が眠ってた。
「うん、電池切れみたいだよ。
翔さん、とりあえずお昼にしたら?」
潤がキッチンから声をかける。
「二人とも食べたの?」
翔の問いかけに雅紀が首を振る。
「二人ともお昼が出来るのを
待ってる間に寝ちゃったよ。
全力で遊ん出たからねぇ」
雅紀が目を細めて和室を見る。
「やっぱり雪って珍しいもんね、
この辺じゃ。
うん、やっぱり休み合わせてさ、
皆でスキー行こう?」
「ふふふ、そうだね。
まぁ、滑れるかは微妙だけど
何事も経験だし、
俺達もこんな時期からだよね?
スキーにつれてってもらったの」
自分たちの小さな頃を思い出しながら言う雅紀に笑いながら賛同する翔。
「二人とも、食べよう?
大したもんじゃないけど」
パスタ皿を手にした潤が二人に声をかける。
ダイニングテーブルを囲んだ大人たちはかわいい双子の寝顔を目の端に収めつつ、また新しい思い出作りの為の計画を話しながら舌鼓を打った。
翌日、5人は庭に置かれた5匹の雪うさぎに挨拶をして新しい1日をスタートさせた。
間近に来てる春だけど、冬のニオイを感じるそんな1日だった。
<冬のニオイ <了>>