第9章 小さな恋のうた <双子4歳>
手を洗ってリビングに戻ってきたときにはすっかり笑顔になっていた智。
「ほら、智も座って?これ食べな?」
そう言って小さく切った梨を入れたガラスの器をそっと差し出した。
潤と雅紀もビールを出してきて食卓につく。
潤の手にはいつの間にか作ったのか、何種類かのツマミが載った皿もある。
4人はすでに夕食を終えていたが翔ひとりで食卓にいるのもなんか嫌で軽いものを出して結局、5人で同じ時間を過ごす。
「智たちさ、何書いてたの?」
みんなが落ち着いたところで改めて翔が聞いた。
「あのね、さとちゃんにあげるの」
「さっちゃん、しばらくほいくえんにこれないんだって、まゆせんせいがいってたの」
「さとちゃん、かぞくだからね、おてがみ、するの」
次々と話す双子の話に全く付いて行けず、翔はますます困った顔で双子をみている。
その視線に気が付かない智と和也は梨をシャリシャリと食べながら更に話を続けている。
「和はのんたんと剛くんとかぞくなの」
「智はさっちゃんと慎吾くんとかぞくなんだよ」
なぜか自分のではなくお互いの家族とやらをドヤ顔て紹介する2人。
翔は完全にきょとんとしている。